『宇宙人の画家』(0号上映鑑賞時感想)

言葉で語ることが不可能な映画。まるで『宇宙人の画家』が描く光のキャンバスのような  少ない予算ながらも脚本や演出の工夫が上出来で、クチコミでじわじわ上映が拡大してゆく──昨今、そんなインディペンデント系映画のヒット作が定期的に生まれ、マニアックな映画ファン……

『アルトゥロ・ウイの興隆』(11/14)

ブレヒトを現在上演する意義は深い。しかし、そこには種々困難な問題がある。 劇中で比喩し、観客に問題提起している諸問題が今や過去のものとなり、何を話題にしているのかがわかりにくいという事(問題の核心は普遍的なものではあれども)、劇中会話に一種独特な冗長さがあ……

スケアリーストーリーズ 怖い本

登場人物それぞれが体験する恐怖の未来が自動的に記されてゆく『怖い本』。その本の様に、この映画、恐らく観る人の受け取り方によってそれぞれ「恐怖」の質が変わってきます。僕にとって、これは本当に本当に怖い映画でした……。ホラー好きだけでなく、詩情と暗喩に豊んだヨ……

屍人荘の殺人

浜辺美波と神木隆之介がとにかくかわいい。しかし、この映画の主役は間違いなく中村倫也。そして、その中村倫也=明智恭介に注視して観れば、この映画は単に原作のコメディー化というものでなく、「日本のミステリー映画、保守本流の美学」に則し、かつ、それをアップデートす……

天気の子

初めて観た新海作品『君の名は。』が全くダメで、「評判の新海誠ってこんな人なの?」と、確認のために遡って観てみた過去作品がことごとく合わず、今回の『天気の子』がまたダメだったらこの人の映画を観るのはこれで最後にしよう──と思って映画館に出掛けた(だったら観な……

きみと、波にのれたら

【湯浅政明監督一流の表現主義的な芸術路線でくるのか、あるいは逆に最近流行の叙情的な「泣かせる」路線でくるのか、そのどちらかなんだろうな……と予想していたら、そのどちらでもなかった。少女漫画的王道路線をあえて貫いた優れた脚本と、美しく切なく描かれる「水」のア……

ザ・バニシング─消失─

【一本の映画が、まるで生きる事そのものを表現しつくしているかの様な驚くべき傑作──。人生は色々な分岐と偶然に充ちている。一歩間違えれば「死」が待つ綱渡りを辛うじて生き残った夫婦の物語がキューブリックの『アイズ・ワイド・シャット』。この映画はその逆、皮肉な運……

ねじれた家

【市川崑の金田一耕助映画の様に陰影深くてスタイリッシュ。70年代のクリスティー映画ほど豪華絢爛な「ザ・オールスター」感はないが、実力的にはそれに匹敵する演技力と存在感のある名優たちが揃っている。そして、屋敷の内装、登場人物と一緒に映り込む絵画・肖像写真で人……

幸福なラザロ

【詩情豊かで美しく、ほろ苦く、人生への示唆に富んだ「イタリア映画」……その豊穣の歴史の高純度の結実。ロッセリーニ的でもあり、ヴィスコンティ的でもあり、フェリーニ的でもある。しかし、かといってそのどれでもない。イタリア映画の歴史とヨーロッパの神話、そして世界……