『十三世片岡仁左衛門二十七回忌追善狂言』二月歌舞伎座・夜の部(2/22)

八陣守護城 まず、進之介がとても上手くなっていた。変な言い方かもしれないが、以前を知る方ならこの感想は解って下さるのではないか。悪く言うつもりではなくて、本来松嶋屋の御曹司の彼がその名の如く前進してくれる事は、上方歌舞伎ファンとしてとにかく嬉しい。遅いとい……

『十三世片岡仁左衛門二十七回忌追善狂言』二月歌舞伎座・昼の部(2/5)

菅原伝授手習鑑 加茂堤 前月歌舞伎座を観そびれたので久々の歌舞伎座での勘九郎。「いだてん」のブランクで雰囲気が変わってしまっているかな……と僅かに心配していたが、それは全くの杞憂、むしろ以前に増して「歌舞伎役者」としての面構えというか、雰囲気というか、そう……

十二月歌舞伎座・夜の部(12/15)

心霊矢口渡 最も良かったのは梅枝のお舟。その次が萬太郎の下男六蔵。 お舟が良いのは見物としても嬉しい事だが、次に挙がるのが下男六蔵というのは、やはり芝居としては少々不甲斐ない。 義峯とうてなは、まぁ、それほど押し出す役でもなく、何が悪かったという訳ではなく……

十月歌舞伎座・夜の部【偶数日】

通し狂言 三人吉三巴白浪 このところ、黙阿弥の言葉の美学・世界の広がりを感じさせる力をもたない「大川端」の見どりばかり見せられていたので(現在、大幹部以外でこの幕の見どりを成立させ得る役者はいない。そんなつまらない見取りを掛けるのはもうやめた方がいい)、久……

九月歌舞伎座・夜の部【奇数日】

寺子屋 幸四郎の武部源蔵、物思いに耽りながらの沈鬱な出が大変良かった。が、その沈鬱な芝居に引きずられてか、続く戸浪への物語りの描写にドラマチックな起伏がやや乏しい。ここでもう少し源蔵の覚悟のほどを描いて見せてくれれば、一連の出来事ののっぴきならない状況に一……

八月南座超歌舞伎(8/17昼)

タイムテーブルを見ると「超歌舞伎のみかた」25分、幕間20分、「お国山三」15分、長幕30分、「今昔饗宴千本桜」70分と、演目が短いわりに幕間が長く、ちょっとセコイ考えなのだけど「これはコスパが悪いのでは?」と出掛けるのをためらう気持ちが少々あった。が、実……

八月歌舞伎座・第三部『新版雪之丞変化』(初日)

市川崑の映画版『雪之丞変化』はモダンな映像美が素晴らしかったが、主役の長谷川一夫が大石内蔵助の様に男っぽく立派すぎて、今ひとつ「雪之丞」というイメージではなかった。今回の玉三郎は「雪之丞」(そのタイトル・役名だけでえもいわれぬ美しさを想像させる美麗な女形)……

第五回 晴の会『肥後駒下駄』(8/4 夜)

あべのハルカス下近鉄百貨店、近鉄アート館。三面囲みフォーメーションの出舞台と定式幕が開閉される背後の本舞台、大道具小道具は必要最小限。言葉にすると、それは小劇場的、実験的試みに拠って立つ、近年盛んな「演劇的歌舞伎」の一種の様に聞こえるかもしれないが全くそう……

七月松竹座・夜の部(7/19)

『葛の葉』 時蔵の葛の葉である、という以外、特に言うべきことない葛の葉。その安定を流石と思うか退屈と思うかは個々時々の気分によるものかもしれない。子役とのやりとりにあと少し突き抜けるところがあれば、芝居全体の情感はより味わい深いものになったのではないだろう……

七月歌舞伎座・夜の部(7/7)

通し狂言『星合世十三團』 義経千本桜の通しを海老蔵が早替りで全て見せる趣向の芝居。海老蔵の古典、特に丸本物は形だけなぞる様で実や深みに乏しく、期待を裏切られる場合が往々にして多い。が、一つ一つの段を本尺でしっかり見せるのではなく、早替りという外連味を軸にし……