舞台『魍魎の匣』(6/21)

ミステリーの舞台化といえば昨年の新派公演『犬神家の一族』の大成功が記憶に新しい。その成功はひとえに台本と演出の良さ、ベテランから若手まで演者の熱演の賜物ではあったものの、根本には横溝正史と新派の芝居、それぞれに通底する「消えゆくものへの哀惜の情」が見事なま……

六月歌舞伎座・夜の部(6/20)

三谷かぶき『月光羅針路日本』 一幕が終わった時点では、これは駄目かと思った。 松也の使い方は新鮮でとても良く、馴染みの歌舞伎座をまるで別の空間の様に感じさせ、「これはこれからとんでもない事が起こるのではないか」と鳥肌の立つ様な期待を感じさせた。が、幕が開い……

きみと、波にのれたら

【湯浅政明監督一流の表現主義的な芸術路線でくるのか、あるいは逆に最近流行の叙情的な「泣かせる」路線でくるのか、そのどちらかなんだろうな……と予想していたら、そのどちらでもなかった。少女漫画的王道路線をあえて貫いた優れた脚本と、美しく切なく描かれる「水」のア……

六月歌舞伎座・昼の部(6/16)

『寿式三番叟』 人品そのものが要となる東蔵翁の立派さを除き、この幕で最も三番叟らしい景色を見せたのは松江だった。もう少し軽さに振るか、重さに振るか、どちらかに偏りを作ればより一層存在感を際立たせられたのではないかと感じるが、ふんわりした存在感もまたこの人一……