【2019年暫定ベスト1。これぞ映画という面白さ、詩情、アクション、ドラマ、ユーモア、サスペンス、そして、LOVE & WAR】

この映画、それほど話題になっていない様ですが、直感的に「これは観たい」と思って出掛けた、そんな自分を褒めてあげたい(笑)

今のところ今年のベスト1!!メチャクチャ面白い!!

すでにジョディー・フォスターの監督主演でハリウッドリメイクが決定しているようですが、たしかに、彼女がこれを撮りたい(演じたい)という気持ちはとてもよく解ります。知的な彼女なればこそ、地球規模の社会問題と、それに「やむにやまれず」立ち向かう一個人の問題を、さぞドラマチックかつ真面目に描くのではないかと思われ、それはそれできっと良い映画になるのだろうと予想しますが、この映画──

これぞ映画という面白さ、詩情、アクション、ドラマ、ユーモア、サスペンス、そして、LOVE & WAR……それぞれの要素の絶妙なバランスと飄々とした美しさ、北欧映画ならではの空気感と地の果ての景色、ひとまずこちらのオリジナルを先に観た方が絶対に良いです。

ストーリーはというと、コーラス講師の一女性・ハットラが環境問題への独自の問題意識から、アルミニウム工場に電気を送る鉄塔の送電線を切る活動(はっきり言えばテロ)に単身勤しむ活動家「山女」として、アイスランドの大地で弓を引き、官憲から逃れ、また電線を切り……という日々を送っています。そんな彼女が孤児の少女を養女に迎える事となり、母親になる事、一人の少女に手を差し伸べられる事に胸を踊らせるのですが、官憲の追及の手は彼女の双子の姉、そして彼女自身へと徐々に近づき……という感じで、ユーモアとスリルを交え進行して行きます。

「独善」と言い切ってしまうには少々気の毒にも思える「やむにやまれない問題意識」で戦うハットラの姿は過激で独特で、そしてなんとも悲しく滑稽でもあり、『シリアル・ママ』のキャスリン・ターナーのユニークな殺人鬼の名演技を思い出させます。(ジョディー・フォスター版は『エイリアン』のシガニー・ウィーバーっぽくなりそうな予感)

また、この映画は音楽の表現方法がユニークで、三人のおじさんバンド、三人の民族音楽の女声合唱が劇中には「いないもの」として画面に映り、観客の目には「見える」形でサウンドトラックを演奏します。そのパンチの効いたフォルクロールな響きは、まるでアイスランドの広野の地霊の象徴の様でもあり、『アンダーグラウンド』のブラスの強烈な印象を思い出させます。

社会的・政治的な問題意識が物語の中心にはあるのだけれど、この映画は意識的にメッセージを発したり、なんらかの結論を導く訳ではありません。それが、現代の欧州や世界が直面している(実は我々一人一人が直面している)問題の難しさを印象的に物語っていて、こういった押し付けがましくない問題提起こそが「我々個々の心に深い余韻を残す『映画』というもの」の醍醐味なのではないかと僕は思います。

さぁ、追い詰められた「山女」の運命、孤児の少女の人生、そして、地球の未来はいかに……

是非劇場でご確認下さい。

これは間違いなく今年必見の映画です。

『たちあがる女』 公開中


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