新国立劇場(2/24)

【見事なまでの駄作と評さざるを得ない。しかし、観た事自体に後悔はない】


この『紫苑物語』は三本の矢「知(歌)・殺(暴力)・魔(虚無あるいは永遠)」という主題が現代オペラに馴染むという直感をもって発注されたのではないかと推察するが(その選択は正しいと思う)、音楽、台本、演出、全ての点でその期待に応えられていない。
見事なまでの駄作と評さざるを得ない。


①台本
日本語のオペラ化は発音等様々な点で非常な困難があり、詞章の工夫は大前提の事であるが、極めて現代語的散文的かつ語彙の乏しい台本には「オペラと向き合う」考察の痕跡は何一つ感じられなかった。通常演劇の台本としても筋が不明瞭で、オペラに必須のドラマティックな感動は皆無の作だった。

②音楽
音符を一つずつなぞって散文的に喋るが如き歌唱は、まるで映画やミュージカルの中「難解で滑稽な現代オペラ」と戯画化されるパロディ作の様。戯画として機能しているだけ、そちらの方がまだマシ。唐突な裏声や巻舌、『ルル』の模倣の様な被せ合う四重唱等に新しさや工夫は何一つ感じられない。

③演出
舞台上のカメラ映像の映し出し、鏡、マッピング……全てどこかで見た様な演出。それは別に構わないのだが、必然性や意図は何も見えない。文字のマッピング表示は余りにも直接的で稚拙。古典での加味ならまだしも、新作の前奏曲中にマイムで物語説明するなど筋が悪いにも程がある。そも作品の悪さゆえ、演出は気の毒ではある。

人の感性は当然様々なので、この作で感動した人の余韻を毀損するつもりは毛頭ない。が、何ら含む所はなく(むしろ新国の新制作への意欲に感じるのは期待と敬意ばかりだ)これが正直な感想なのでご容赦願いたい。
こういった作品に出会う可能性も含めての新作オペラ鑑賞なので、観た事自体に後悔はない。


1 のコメント

  1. 和洋中が混在する衣装も安易。主人公は三國志から出てきたのか? セクシャルな表現も不快。「襞」などという言葉まで使う必要がどこにあるのか? 何よりも歌詞が説明に堕していて、詩になっていない。しかもだらだらと音符を乗せているだけ。四重奏もひたすらうるさく、字幕を追わざるを得ない。「薔薇」の三重奏、「コジ」の六重奏のハーモニーの美しさの足元にも及ばない。そも、比べることが間違いだが、、、。

    匿名

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